南極オゾンホールの状況(2024年)
診断
(注意)オゾンホールの実況を9月~翌年1月頃まで毎月更新して報告しています。掲載したデータは速報値ですので、今後値が見直される場合があります。
オゾンホール
オゾンホールは、南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、オゾン層に穴の空いたような状態であることからその名が付けられました。
南半球の冬季から春季にあたる8~9月ごろ発生、急速に発達し、11~12月ごろに消滅するという季節変化をしています。1980年代初めからこのような現象が観測されています。
なお、気象庁では南緯45度以南におけるオゾン全量が220 m atm-cm以下の領域をオゾンホールと定義しています。
2024年の南極域上空のオゾン層・オゾンホール
衛星観測によると、2024年の南極オゾンホールは8月中旬に現れ、その時期の最近10年間の最小値と同程度の面積で推移したのち、8月下旬から面積が拡大し、9月下旬には最近10年間の平均値程度となりました。その後、10月中旬にかけて最近10年間の平均値より小さい値で推移しています(図1(a))。図3に示すように、7月から8月にかけて南極上空の高度20km付近の気温の低い領域が最近10年間の平均値より小さく、特に、8月上旬から中旬にかけてはその時期の最近10年間の最小値より小さく推移したため、オゾン層破壊を促進させる極域成層圏雲の発生が抑えられ、オゾンホールの拡大が遅れたと考えられます。9月には気温の低い領域が最近10年間の平均値と同程度で推移したため、9月下旬にはオゾンホールの面積が最近10年間の平均値程度まで拡大しました(オゾンホールができるしくみを参照)。10月19日現在までの南極オゾンホールの面積の最大値は、9月28日に観測した2,240万km2 (南極大陸の約1.6倍)となっています(図2)。
オゾンホール内で破壊されたオゾンの総量の目安となるオゾン欠損量は、7月下旬から9月上旬にかけて、その時期の最近10年間の最小値と同程度で推移し、9月下旬には最近10年間の平均値程度の値となりましたが、その後、10月中旬にかけて最近10年間の平均値より小さい値で推移しています(図1(b))。
また、オゾンホールの深まりの目安となる領域最低オゾン全量は、8月上旬から中旬は最近10年間の平均値より概ね大きい値で推移し、その後は最近10年間の平均値と同程度で推移しています(図1(c))。
南極昭和基地(図2中の▲印)で行われたオゾンゾンデ観測によると、9月に入り、南極昭和基地上空で顕著なオゾン破壊がみられるようになりました。南極昭和基地における9月の月平均オゾン分圧は、高度15kmから20kmは参照値(オゾン量の減少傾向が止まり、少ない状態で安定していた期間の平均値)より高くなりましたが、高度20kmから25kmでは参照値より低くなりました(図4)。
(b)オゾン欠損量 |
(c)領域最低オゾン全量 |
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図1 2024年のオゾンホールの規模
(a)オゾンホールの面積、(b)オゾン欠損量、(c)領域最低オゾン全量の推移。
赤線:2024年。衛星観測データの欠測等で解析できなかった日は描画していない。
黒線:最近10年間(2014~2023年)の平均値。
濃い紫色の領域:最近10年間の最大値と最小値の範囲。
緑破線:(a)南極大陸の面積、(c)オゾンホール面積の算出の基準となる220m atm-cm。
米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(OMIおよびOMPSデータ)をもとに作成。
図2 2024年9月28日のオゾン全量南半球分布図
灰色の部分がオゾンホールを示す。
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図3 南極上空50hPa面(高度20km付近)における
赤線:2024年、黒線:最近10年間(2014~2023年)の平均値。
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図4 2024年8~9月の月平均オゾン分圧の高度分布グラフ(南極昭和基地)
赤線:実線は観測値の月平均値、点線は観測回数が1回のみであることを示している。
細実線:月の参照値(1994~2008年平均)、横細実線:参照値の標準偏差。
細破線:オゾンホールが明瞭に現れる以前の月平均値(1968~1980年平均)。
オゾン分圧(横軸)が高いほど、その層のオゾン量が多いことを示す。
【参考】:過去の月平均オゾン分圧の高度分布グラフ