北半球高緯度のオゾン層の状況(2019年)

令和2年8月5日更新

診断

2019年の北半球高緯度のオゾン層

   2019年3月の北半球高緯度における月平均オゾン全量は、北半球高緯度の広い地域で大きな正偏差となり、北アメリカ大陸北部では負偏差となりました(図1(b))。 北半球高緯度の正偏差域は2018年12月末に成層圏突然昇温が起きて、気温が高く推移したことが要因と考えられ、北アメリカ大陸北部の負偏差域は、対流圏界面高度が高かったことが要因と考えられます。 北半球高緯度の下部成層圏(北緯60度以北50 hPa面)における2018年7月~2019年6月の最低気温は、12月中旬まで累年平均値と同程度で推移しましたが、12月下旬から急激に高くなり、3月上旬まで概ね累年平均値より高く推移しました(図2)。 北半球高緯度の下部成層圏の気象状況から2019年の北半球では顕著なオゾン層破壊は起こらなかったと考えられます。
   2019年には顕著なオゾン層破壊は確認されなかったものの、これまで北半球においても大規模なオゾン層破壊が確認されています。特に2010年冬季から2011年春季は顕著で、2011年3月は、極付近を中心に-20 %以下の負偏差となっていたほか、北半球高緯度のほとんどの領域で-10 %以下の負偏差となりました(図1(d))。

(a)2019年3月のオゾン全量

(b)2019年3月のオゾン全量偏差

オゾン全量 オゾン全量偏差

(c)2011年3月のオゾン全量

(d)2011年3月のオゾン全量偏差

オゾン全量 オゾン全量偏差

図1 2019年3月及び2011年3月の北半球の月平均オゾン全量、オゾン全量偏差分布図

月平均オゾン全量の等値線間隔は15 m atm-cm、偏差の等値線間隔は5 %。
北極点付近の白色域は太陽高度角の関係で観測できない領域。
比較の基準は1997~2006年の月別累年平均値。
図は米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データをもとに気象庁で作成した。


北半球高緯度の最低気温の推移

図2 北半球高緯度上空(50hPa)における北緯60度以上の領域最低気温の推移

赤線:2018年7月~2019年6月 、青線:2010年7月~2011年6月。
黒線:累年平均値 (7~12月は1979~2017年、1~6月は1979~2018年)。
灰色領域:標準偏差の範囲、紫色領域:最大値と最小値の範囲。
緑線:極域成層圏雲出現の目安である-78℃を示す。
気象庁の長期再解析(JRA-55)をもとに作成した。



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