大気中メタン濃度の経年変化

温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)が解析した2022年の大気中メタンの世界平均濃度は、前年と比べて16ppb※1増えて1923ppbでした。工業化以前(1750年)の平均的な値とされる約729ppb※2と比べて、164%増加しています。
※1 ppbは大気中の分子10億個中にある対象物質の個数を表す単位です。
※2 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次評価報告書第1部作業部会報告書(2021年)第2章 2.2.3 Well-mixed Greenhouse Gases (WMGHGs) (p.298 – 304)を参照。

気象庁の観測点における大気中メタン濃度及び年増加量の経年変化

気象庁の観測点での大気中メタン濃度と濃度年増加量の経年変化

月平均濃度と季節変動を除いた濃度(上図)及び濃度年増加量(下図)。一部の観測値は速報値です。観測値の状況については月平均値をご参照ください。

 気象庁の観測地点である綾里、南鳥島及び与那国島における大気中メタン濃度とその時系列データから、季節変動や、それより短い周期成分を取り除いた濃度及び濃度年増加量の経年変化を示します。これら国内3地点の観測では、観測開始から2003年にかけて見られていた増加傾向は2004年から2006年にかけて不明瞭となっていましたが、2007年以降は再び増加しています。綾里は与那国島や南鳥島に比べて高緯度に位置するため、濃度が高くなっています。また、与那国島と南鳥島はほぼ同じ緯度帯にありながら与那国島の方が秋から春にかけて高くなっています。これは、与那国島が大陸に近いために、秋から春にかけての季節風により、放出源が多く分布する大陸からの影響を強く受けるためと推定されます。

大気中メタンの世界平均濃度の経年変化

大気中メタンの世界平均濃度の経年変化グラフ

青色は月平均濃度。赤色は季節変動を除去した濃度。

温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)が世界各地の観測データを収集し、それをもとに解析した大気中メタンの世界平均濃度の経年変化を示します。2000年代前半に一時濃度上昇が見られなくなったほかは、濃度が上昇していることが分かります。

緯度帯ごとに平均した大気中メタン濃度の変動

緯度帯ごとに平均した大気中メタン濃度の変動

 WDCGGが収集したデータをもとに、緯度帯別に平均した大気中メタンの月平均濃度の経年変化を示します。
 大気中メタン濃度は北半球の中・高緯度帯から熱帯域にかけて大きく減少しています。これはメタンの主な放出源が北半球陸域に多く、かつ南半球に向かうにつれて熱帯海洋上の豊富なOHラジカルと反応し消滅するためです。
 季節変動は、夏季に低く冬季に高い傾向がみられます。また、季節変動の振幅は南半球より北半球で大きいこと、濃度の増加は北半球高緯度で先行して次第に南半球に広がっていくこと、濃度年増加量は全球的なスケールで変動していることなど、二酸化炭素に類似した特徴がみられます。

関連情報