エルニーニョ監視速報(No.386)
2024年10月の実況と2024年11月〜2025年5月の見通し
気象庁 大気海洋部
令和6年11月11日

  • エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、ラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりつつある。
  • 今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になるが、春までは続かないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性もある(40%)が、平常の状態が続く可能性の方がより高い(60%)。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の経過と予測

エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値の実況と予測を示した時系列グラフ
図1 エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値
8月までの経過(観測値)を折れ線グラフで、大気海洋結合モデルによる予測結果(70%の確率で入ると予想される範囲)をボックスで示している。指数が赤/青の範囲に入っている期間がエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間である。エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率(予測期間:2024年9月〜2025年3月)

平均期間
2024年 9月2024年7月〜2024年11月
10月2024年8月〜2024年12月
11月2024年9月〜2025年1月
12月2024年10月〜2025年2月
2025年 1月2024年11月〜2025年3月
2月2024年12月〜2025年4月
3月2025年1月〜2025年5月
エルニーニョ現象 平常 ラニーニャ現象
図2 5か月移動平均値が各カテゴリー(エルニーニョ現象/平常/ラニーニャ現象)に入る確率(%)
エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が+0.5℃以上/-0.4℃〜+0.4℃/-0.5℃以下の範囲に入る確率を、それぞれ赤/黄/青の横棒の長さで月ごとに示す。気象庁の定義では、5か月移動平均値が+0.5℃以上(-0.5℃以下)の状態で6か月以上持続した場合にエルニーニョ(ラニーニャ)現象の発生としているが、エルニーニョ監視速報においては速報性の観点から、実況と予測を合わせた5か月移動平均値が+0.5℃以上(-0.5℃以下)の状態で6か月以上持続すると見込まれる場合に「エルニーニョ(ラニーニャ)現象が発生」と表現している。

解説

エルニーニョ/ラニーニャ現象

  • 10月の実況:エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、ラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりつつある。 10月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.4℃で、基準値に近い値だった(図3)。また、ラニーニャ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の8月の値は-0.3℃で、基準値に近い値だった。太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、中部から東部にかけて平年より低かった(図4図6)。太平洋赤道域の海洋表層の水温は西部で平年より高い一方、中部から東部では平年より低く、東部でも低温が強まった(図5図7)。太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年より強かったが、これらには熱帯季節内振動の影響もあった(図8図9図10)。このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られるが、ラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりつつあることを示している。
  • 今後の見通し:今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になるが、春までは続かないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性もある(40%)が、平常の状態が続く可能性の方がより高い(60%)。 実況では、太平洋赤道域の中部から東部で海洋表層の冷水(図5)が強まっている。大気海洋結合モデルは、今後、太平洋赤道域の西部から中部で貿易風が強まるとともに中部から東部の冷水がさらに強まり東進するため、エルニーニョ監視海域の海面水温が冬は基準値より低い値で推移する可能性が大きいが、大気海洋結合の弱まりとともに春にかけて上昇して基準値に近づくと予測している(図11)。以上のことから、今後、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になるが、春までは続かないため、ラニーニャ現象の定義を満たす可能性もある(40%)が、平常の状態が続く可能性の方がより高い(60%)。

西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況

  • 西太平洋熱帯域: 10月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値だった(図3)。今後、春にかけて基準値より高い値か基準値に近い値で推移すると予測される(図12)。
  • インド洋熱帯域: 10月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値だった(図3)。今後、冬にかけて基準値に近づき、春は基準値に近い値か基準値より低い値で推移すると予測される(図13)。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率値(図2)と主文における見通しの表現

* エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生や持続の見通しについては、季節単位で記述することとし、 原則として、現象の発生を記述する場合はその季節の最後の月の発生確率値を、 現象の持続を記述する場合はその季節の最初の月の発生確率値を用いて下表のように表現する。 ただし、発生確率値の推移によってはこの原則を用いないことがある。
発生確率
エルニーニョ平常ラニーニャ主文における表現(発生確率は例)
現象現象
50%以上30%以下エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性が高い(50%)
60%40%0%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
エルニーニョ50%40%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生50%50%0%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)40%40%20%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
40%50%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
40%60%0%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
30%以下50%以上ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性が高い(50%)
0%40%60%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
ラニーニャ10%40%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生0%50%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)20%40%40%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
10%50%40%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
0%60%40%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
平常の状態
への移行30%以下50%以上30%以下平常の状態になる(が続く)可能性が高い(50%)。
(持続)
次回発表予定日時:12月10日14時

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