黄砂に関する基礎知識
黄砂現象とは
黄砂現象とは、東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯から強風により吹き上げられた多量の砂じん(砂やちり)が、上空の風によって運ばれ、浮遊しつつ降下する現象を指します。日本における黄砂現象は、春に観測されることが多く、時には空が黄褐色に煙ることがあります。
黄砂現象発生の有無や黄砂の飛来量は、発生域の強風の程度に加えて、地表面の状態(植生、積雪の有無、土壌水分量、地表面の土壌粒径など)や上空の風の状態によって大きく左右されます。黄砂粒子はいったん大気中に舞い上がると、比較的大きな粒子(粒径が10マイクロメートル以上)は重力によって速やかに落下しますが、小さな粒子(粒径が数マイクロメートル以下)は上空の風によって遠くまで運ばれます。例えば、東アジアが起源の黄砂粒子が太平洋を横断し、北米やグリーンランドへ輸送されたことも報告されています。
黄砂解説図
地形データは、米国海洋大気庁地球物理データセンター作成のETOPO1(緯度経度1分格子の標高・水深データ)を使用しています。
本ページ内の図の作成にはGMT (Wessel et al., Generic Mapping Tools: Improved Version Released, EOS Trans. AGU, 94(45), 409-410, 2013. doi:10.1002/2013EO450001)を使用しています。
黄砂の観測について
目視による観測
東京・大阪の2地点(2024年3月27日現在)では、空中に浮遊した黄砂で大気が混濁した状態を観測者が目視で確認した時を、黄砂として観測しています。黄砂の観測では、黄砂の観測を開始した時間と終了した時間、決められた観測時間の視程などを記録しています。
気象台での黄砂の観測記録は、過去の気象データ検索の「1時間ごとの値」の記事欄から調べることができます。
また、黄砂の過去の観測統計については、黄砂のデータ集から調べることができます。
測器による観測
気象庁では、地上設置型の測器であるスカイラジオメーター、気象衛星などのリモートセンシング技術による観測装置を用いて、黄砂などのエーロゾルの観測を行っています。
スカイラジオメーターでは黄砂等エーロゾル光学的厚さや粒径分布等を観測することができます。また、静止気象衛星「ひまわり」の観測データから、黄砂などの分布状況を解析することができます。
黄砂の予測について
黄砂分布の予測には、黄砂発生域での黄砂の舞い上がり、移動や拡散、降下の過程等を組み込んだ数値モデルを用いています。
気象庁で用いている数値モデルは、水平解像度が約40km、鉛直解像度が40層(地表~約55km)で、粒径(直径)0.2マイクロメートル~20マイクロメートルの黄砂を10段階に分割して、96時間先までの黄砂の濃度などを予測しています。さらに、この数値モデルにおいて、静止気象衛星「ひまわり」の観測データを活用することにより、前日の黄砂分布状況を解析しています。
黄砂情報のページの黄砂解析予測図は、この数値モデルの結果をもとに、地表付近(高度1kmまで)の濃い黄砂(黄砂濃度が90マイクログラム/立方メートル以上の領域、視程では10km未満に相当)の予測領域などを表示しています。
黄砂の数値モデルの模式図