北半球高緯度のオゾン層の状況(2020年)
診断
2020年の北半球高緯度のオゾン層
2020年春季の北半球高緯度では、これまで北半球において確認された中で特に顕著な2011年春季と同程度かそれ以上に顕著なオゾン層破壊が観測されました。北半球高緯度の広い範囲で3月の月平均オゾン全量が、極付近を中心に-30%以下の負偏差となり、-40%以下の負偏差もみられました(図1(b))。北極域上空で極域成層圏雲が出現するような気温の低い状況が冬季から春季にかけて長期間継続したためと考えられます。
北半球高緯度の下部成層圏(北緯60度以北50 hPa面)における2019年7月~2020年6月の最低気温は、1月中旬まで累年平均値と同程度で推移しましたが、1月下旬から低くなり、4月下旬まで、大規模なオゾン層破壊が確認された2011年春季と同程度の低さで推移しました(図2)。
(a)2020年3月のオゾン全量 |
(b)2020年3月のオゾン全量偏差 |
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(c)2011年3月のオゾン全量 |
(d)2011年3月のオゾン全量偏差 |
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図1 2020年3月及び2011年3月の北半球の月平均オゾン全量、オゾン全量偏差分布図
月平均オゾン全量の等値線間隔は15 m atm-cm、偏差の等値線間隔は5 %。
北極点付近の白色域は太陽高度角の関係で観測できない領域。
比較の基準は1997~2006年の月別累年平均値。
図は米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データをもとに気象庁で作成した。
図2 北半球高緯度上空(50hPa面)における北緯60度以北の領域最低気温の推移
赤線:2019年7月~2020年6月
、青線:2010年7月~2011年6月。
黒線:累年平均値 (7~12月は1979~2018年、1~6月は1979~2019年)。
灰色領域:標準偏差の範囲、紫色領域:最大値と最小値の範囲。
緑線:極域成層圏雲出現の目安である-78℃を示す。
気象庁の長期再解析(JRA-55)をもとに作成した。