南極オゾンホールの状況(2021年)

令和4年1月27日更新

診断

オゾンホール

   オゾンホールは、南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、オゾン層に穴の空いたような状態であることからその名が付けられました。 南半球の冬季から春季にあたる8~9月ごろ発生、急速に発達し、11~12月ごろに消滅するという季節変化をしています。1980年代初めからこのような現象が観測されています。

2021年の南極域上空のオゾン層・オゾンホール

   衛星観測によると、2021年の南極オゾンホールは8月上旬に現れたのち8月下旬に面積が急速に拡大し(図1(a))、10月7日に年最大(面積2,480万km2、南極大陸の約1.8倍)となりました(図2)。南極オゾンホールの面積は9月中旬以降、最近10年間の平均値より大きく推移し、10月中旬以降も例年ほど縮小せず推移しましたが、12月中旬ごろから急速に縮小し、12月24日に消滅しました。2021年は南極上空に形成される極渦が大きく、ほぼ円形で安定していたため、極渦内部の高度20km付近の気温の低い領域が6月中旬から10月下旬まで、最近10年間の平均値より概ね広く推移し(図3)、オゾン層破壊を促進させる極域成層圏雲が例年より発達したことが要因と考えられます。11月以降も極渦は大きさが小さくなりつつも例年より勢力が強く、これにより低緯度側からの高濃度オゾンの渦内への流入が抑えられ、高度20km付近の気温の低い領域(図3)が消滅した後もオゾンホールが消滅せずに持続したと考えられます(オゾンホールができるしくみを参照)。
   オゾンホール内で破壊されたオゾンの総量の目安となるオゾン欠損量は、7月下旬以降、最近10年間の平均値より大きく推移し、その時期の最近10年間の最大値と同程度となることもたびたびありました(図1(b))。 オゾンホールの深まりの目安となる領域最低オゾン全量は、7月中旬から8月は最近10年間の平均値と同程度で推移していましたが、9月に入り平均値より小さい値で推移し、9月下旬から11月上旬は最近10年間の最小値と同程度となりました(図1(c))。
   南極昭和基地(図2中の印)で行われたオゾンゾンデ観測によると、 9月に入り、南極昭和基地上空で顕著なオゾン破壊がみられるようになりました(図4)。 9月以降の南極昭和基地は、南極オゾンホールの内部に位置することが多く、9月から10月の月平均オゾン分圧は、概ね 参照値(オゾン量の減少傾向が止まり、少ない状態で安定していた期間の平均値)と同程度となり、11月は高度約15~30 km、12月は高度約10km~25kmで参照値より低くなりました。11月、12月はオゾンホールが12月24日に消滅するまでの間、例年より規模が大きく、南極昭和基地上空の月平均オゾン分圧もこの影響を受けたと考えられます。


(a)オゾンホールの面積
オゾンホールの面積

(b)オゾン欠損量

(c)領域最低オゾン全量

オゾン欠損量 領域最低オゾン全量

図1 2021年のオゾンホールの規模

(a)オゾンホールの面積、(b)オゾン欠損量、(c)領域最低オゾン全量の推移。
赤線:2021年。衛星観測データの欠測で解析できなかった日は描画していない。
黒線:最近10年間(2011~2020年)の平均値。
濃い紫色の領域:最近10年間の最大値と最小値の範囲。
緑破線:(a)南極大陸の面積、(c)オゾンホール発生の目安となる220m atm-cm。
米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(OMIおよびOMPSデータ)をもとに作成。



オゾン全量南半球分布図 南極上空の平均気温の推移

図2 2021年10月7日のオゾン全量南半球分布図

灰色の部分がオゾンホールを示す。
図中の印は、昭和基地の位置(南緯69度、東経39度付近)。
米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(OMPSデータ)をもとに作成。

図3 南極上空(50hPa面)における
南緯60度以南の-78℃ 以下の領域の面積の推移

    赤線:2021年、黒線:最近10年間(2011~2020年)の平均値。
    紫色領域:最近10年間の最大値と最小値の範囲。
    灰色領域:最近10年間の標準偏差の範囲。
    気象庁の長期再解析(JRA-55)をもとに作成。



南極昭和基地オゾン分圧の高度グラフ 右矢印 南極昭和基地オゾン分圧の高度グラフ 右矢印 南極昭和基地オゾン分圧の高度グラフ 右矢印 南極昭和基地オゾン分圧の高度グラフ 右矢印 南極昭和基地オゾン分圧の高度グラフ

図4 2021年8~12月の月平均オゾン分圧の高度分布グラフ(南極昭和基地)

赤線:実線は観測値の月平均値。
細実線:月の参照値(1994~2008年平均)、横細実線:参照値の標準偏差。
細破線:オゾンホールが明瞭に現れる以前の月平均値(1968~1980年平均)。
オゾン分圧(横軸)が高いほど、その層のオゾン量が多いことを示す。
【参考】:過去の月平均オゾン分圧の高度分布グラフ



過去の診断表


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