日本(札幌、つくば、那覇)及び南極昭和基地の上空のオゾン層の状況(2021年)

令和4年10月24日更新

診断

オゾン全量の状況

   2021年の日本の月平均オゾン全量は、札幌では、2、9、11、12月に多く注)なりました。 つくばでは、1月に少なく、7、9、11月に多くなりました。 観測開始(1957年)以来、11月はその月として1番目に多く、9月はその月として3番目に多い値となりました。 那覇では、2、4、7、9~12月に多くなりました。 観測開始(1974年)以来、2、10、11月はその月として1番目に多く、7月はその月として2番目に多い値となりました。 これら地点の月平均オゾン全量の多寡は対流圏界面の高度の高低による影響とみられ、那覇はそれに加え、成層圏準2年周期振動(QBO)が正の位相(赤道付近で高度とともに西風から東風に変化)であったことの影響も考えられます。
   2021年の南極昭和基地上空の月平均オゾン全量は、2、4、8月に多くなりました。2、4月は対流圏界面の高度が低かった影響と考えられます。8月は南極昭和基地が極渦の外にあったことで、極渦内でのオゾン破壊の影響を例年より受けづらかったことが要因として考えられます(南極オゾンホールについては「南極オゾンホールの状況(2021年)」を参照)。

日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量

図1 日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量(2021年)

図の実線は参照値(1994~2008年の月別累年平均値)、縦線はその標準偏差。
南極昭和基地の点線はオゾンホールが明瞭に現れる以前(1961~1980年)の月別累年平均値。
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「多い」こと、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「並」であること、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「少ない」ことを示す。

注)ここでは、月平均値の参照値(1994~2008年の月別累年平均値)からの差が参照値の標準偏差以内にあるときを「並」、それより多いときを「多い」、少ないときを「少ない」としている。


オゾンの高度分布の状況

   つくば上空における2021年のオゾン分圧(図2(a))は、1年を通して高度18~28km付近にオゾン分圧の高い層を示し、中でも1~4月の高度18~22km付近は高い値が観測されました。 オゾン分圧の規格化偏差(図2(b))では、前述の月平均オゾン全量(図1)において「少ない」となった1月は高度4~18km付近や28~32km付近でやや大きな負偏差となりました。一方、月平均オゾン全量(図1)において「多い」となった9月は高度4~14km付近でやや大きな正偏差、11月は高度8~10km付近で大きな正偏差となりました。その他、10月は月平均オゾン全量(図1)で「並」でしたが、高度6~8km付近で大きな正偏差、高度24~28 km付近で顕著な負偏差となりました。
   南極オゾンホールの鉛直構造の特徴は、通常はオゾンが多い高度14~22 km付近において、オゾンが大きく減少することです。 南極昭和基地上空における2021年のオゾン分圧(図2(c))は、9月中旬には高度24km以下で顕著に低くなり、ほぼ全ての高度で5mPa以下となりました。それ以降も低い状態が継続しましたが、10月下旬ごろから高度18~28km付近でオゾン分圧が高くなり、12月上旬には、高度18~22km付近で急激にオゾン分圧が高くなりました。 オゾン分圧の規格化偏差(図2(d))をみると、月平均オゾン全量(図1)において「多い」となった2月は高度24~28km付近、8月は高度16~28km付近でやや大きな正偏差となりました。その他、3月の高度10~12km付近や16~18km付近、12月の高度10km付近で顕著な負偏差となりました。

(a)つくばのオゾン分圧

(b)つくばのオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

(c)南極昭和基地のオゾン分圧

(d)南極昭和基地のオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

図2 つくばと南極昭和基地におけるオゾン分圧と規格化偏差の高度分布(2021年)

オゾン分圧図(a)(c)はオゾンゾンデ観測の個々の観測値を、規格化偏差図(b)(d)は月平均値を用いて作成。オゾンゾンデの2021年観測総数は、つくばは43回、南極昭和基地は52回。つくばの7月は観測回数が0回だったため描画していない。
規格化偏差は1994~2008年における月平均値の累年平均値からの偏差を累年平均値の標準偏差で割った値。
観測値のない高度については、前後の期間のオゾン分圧から内挿処理を行っている。
1994~2008年の累年平均値及び標準偏差の図については、「オゾンの世界分布と季節変化」に掲載している。



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