海洋内部のpHの長期変化傾向(北西太平洋)
令和6年3月5日 気象庁発表
(次回発表予定 令和7年3月5日)
診断(2023年)
- 1990年代以降、北西太平洋亜熱帯域の東経137度及び東経165度の深さ約150mから800mにおける海洋内部での水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は、10年あたり0.013~0.031でした。
- いずれの観測線においても海洋内部で海洋酸性化が進行しています。
東経137度及び東経165度の各緯度における海洋内部での水素イオン濃度指数偏差の長期変化
東経137度及び東経165度の各緯度におけるポテンシャル密度25.0σθから26.9σθ(深さ約150mから800m)でのpHの偏差時系列を示します。偏差は、各密度面で求めた全観測期間の平均値からの差として求めています。
塗りつぶしは標準偏差の範囲(±1σ)、破線は長期変化傾向を示しています。
図中の数字は10年あたりの変化率(低下速度)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
解析手法の詳細は、海洋内部のpHの長期変化傾向(北西太平洋)の見積もり方法をご覧ください。
グラフのデータ[TEXT形式:6KB]
掲載しているデータは、解析に使用するデータの変更などにより修正する場合があります。
解説
北西太平洋亜熱帯域でのポテンシャル密度25.0σθから26.9σθ(深さ約150mから800m)の海洋内部における1990年代以降の水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は、東経137度で10年あたり0.014~0.028、東経165度で10年あたり0.013~0.031でした。いずれの観測線においても、海洋内部で海洋酸性化が進行しています。
海水のpHは、二酸化炭素の蓄積による要因のほか、海洋の循環や生物活動などによっても変動します。緯度ごとのpHの低下速度をみると、亜熱帯では北部のほうが南部よりも低下速度が速い傾向があります。これは、亜熱帯北部ほど人為起源二酸化炭素蓄積量が多いことと整合しています(海洋中の二酸化炭素蓄積量参照)。
海洋内部のpHの長期変化傾向の診断では、Takatani et al.(2014)に基づいた海洋内部のpHの長期変化傾向(北西太平洋)の見積もり方法を使用しています。pHの値は水温によって変化しますが、ここでは、現場水温におけるpHの値で長期変化傾向を見積もっています。なお、海洋酸性化とは、海洋が酸性(pHが7以下)になることではなく、より酸性側に近づく(pHが低下する)ことを指します。
参考文献
- Takatani, Y., A. Kojima, Y. Iida, T. Nakano, M. Ishii, D. Sasano, N. Kosugi, and T. Midorikawa, 2014: Ocean acidification in the interior of the western North Pacific subtropical region, Abstract for 2nd International Ocean Research Conference.