北西太平洋の底層の水温変化
令和8年3月5日 気象庁発表
(次回発表予定 令和9年3月5日)
診断(2025年)
2025年に観測した北西太平洋の底層(水温1.2℃以下の領域)の平均水温の変化は、以下のとおりでした。
- 東経137度線の海域Cでは1994年と比較して0.006℃上昇しました。
- 東経165度線の海域Fでは2011年と比較して有意な変化はみられませんでした。
各ボックスをクリックすると各海域でのデータが表示されます
(*は海域内にデータの欠測がある場合を指します)
| 年 | 月 | 平均水温(℃) | 1994年との差 |
|---|---|---|---|
| 1994 | 7 | 1.152 | - |
| 2010 | 7 | 1.157 | +0.005 |
| 2011 | 6 | 1.154 | (+0.002) |
| 2012 | 8 | 1.154 | (+0.002) |
| 2013 | 7 | 1.155 | (+0.002) |
| 2014 | 6 | 1.153 | (+0.001) |
| 2015 | 6 | 1.154 | (+0.001) |
| 2016 | 7 | 1.156 | (+0.003) |
| 2017 | 8 | 1.156 | +0.004 |
| 2018 | 7 | 1.159 | +0.006 |
| 2019 | 1 | 1.159 | +0.007 |
| 2019 | 8 | 1.159 | +0.007 |
| 2020 | 1 | 1.160 | +0.008 |
| 2020 | 7 | 1.159 | +0.007 |
| 2021 | 1 | 1.157 | +0.005 |
| 2022 | 1 | 1.159 | +0.007 |
| 2022 | 9 | 1.158 | +0.006 |
| 2023 | 2 | 1.158 | +0.006* |
| 2023 | 9 | 1.156 | +0.004* |
| 2024 | 2 | 1.156 | +0.004 |
| 2024 | 8 | 1.155 | (+0.003*) |
| 2025 | 2 | 1.158 | +0.006 |
| 年 | 平均水温(℃) | 1989年との差 |
|---|---|---|
| 1989 | 1.077 | - |
| 2015 | 1.083 | +0.006 |
図1 北西太平洋における底層の水温の観測を行っている海域
地図中に示す8海域で、1980年代から1990年代にかけて行われた海面から海底までの高精度の海洋観測の結果と、近年実施した同じく高精度の海洋観測の結果から、それぞれの水温1.2℃以下の領域での平均水温を見積もり、それらの平均水温の差を示しています(ただし、海域Fは2011年から)。平均水温の差にある( )付きの値は有意な変化ではないことを表します。地図中で薄い灰色で示した部分は、水深が4000mより浅い海域を表します。各海域の詳しい範囲及び使用した観測データについては「北西太平洋の底層の水温変化:補足資料」をご覧ください。平均水温の差の値をクリックすると底層の水温変化の断面図をご覧になれます。
水温は、水圧による水温上昇分を除いたポテンシャル水温で表します。
注)端数を四捨五入しているため、表記した数値の差は「平均水温の差」と値が一致しない場合があります。
解説
気象庁は、2010年からは毎年、北西太平洋において海面から海底までの高精度の海洋観測を行っています(図1)。2025年は東経137度の海域C、東経165度の海域Fについて観測を行いました。その結果、底層水(水温1.2℃以下)の平均水温は、海域Cでは1994年と比較して0.006℃上昇し、海域Fでは2011年と比較して有意な変化がみられませんでした。
近年、1980~1990年代の海洋観測とそれ以降の観測の比較が盛んに行われ、北太平洋の様々な海域において、底層で0.005~0.01℃の水温上昇が報告されています。気象庁が過去に行った観測でも、東経137度の西マリアナ海盆(海域A-C)、千島列島周辺(海域D)、およびカロリン諸島周辺(海域H)で、有意な水温上昇がみられています。
北太平洋の底層水は、南極周辺海域の海面で冷却され、底層へと沈み込んだ海水を主な起源としています(太平洋における深層循環)。南極周辺海域で生じた水温の変化は、海底地形に沿って数十年で北西太平洋まで到達するとされており、北西太平洋の底層における昇温は、南極周辺海域での冷却の弱まりと、底層水の形成量の減少を示唆するものだと考えられます。北太平洋の底層水温には長期的な昇温傾向だけでなく、十年規模の変動がみられることが、最近の研究で明らかになっています (Tian et al., 2021)。これに関連して、近年データが蓄積されてきた東経137度線の海域Cにおいても、十年規模の変動がみられることが分かってきました(図2)。地球温暖化の進行を正確に監視するためには、十年規模の変動を把握することが重要となります。
参考文献
- Kaneko, I., 1994: R/V Ryofu Maru Cruise Report: P09. [Available online at http://cchdo.ucsd.edu/data_access/show_cruise?ExpoCode=49RY9407_1]
- Tian, Z., Zhou, C., Xiao, X., Wang,T., Qu, T., Yang, Q., et al., 2021: Water-mass properties and circulation in the deep and abyssal Philippine Sea. Journal of Geophysical Research:Oceans, 126, e2020JC016994, https://doi.org/10.1029/2020JC016994.
- Uchida, H., Nakano, T., Tamba, J., Widiatmo, J.V., Yamazaki, K., Ozawa,$ S., and Kawano, T. 2015: Deep Ocean Temperature Measurement with an Uncertainty of 0.7 mK. Journal of Atmospheric and Oceanic Technology 32:2199–2210, https://doi.org/10.1175/JTECH-D-15-0013.1.
図2 海域Cの底層の水温変化
図1の海域Cにおける水温1.2℃以下の領域での平均水温の時系列。エラーバーは、各測点の基準値(全期間で計算した平均値)からの差を用いて計算した航海毎の標準誤差と、観測機器の測定精度から見積もっています。測定精度は、1994年はKaneko (1994) による0.003℃、2010年以降はUchida et al. (2015) による0.0007℃を用いています。水温は、水圧による水温上昇分を除いたポテンシャル水温で表します。
