大気一酸化二窒素の観測

分析計

大気一酸化二窒素濃度の観測には、放射線源(63Ni)を用いた電子捕獲型検出器(Electron Capture Detector: ECD)を搭載したガスクロマトグラフを用いています。大気環境観測所(綾里)で現在使用している分析計は、㈱島津製作所製のGC-2014です(図1参照)。

大気一酸化二窒素観測装置(綾里)

図1 大気一酸化二窒素観測装置(綾里)


大気試料の採取及び分析

綾里では、地上高約7mに取り付けた取入口(クロロフルオロカーボン、1,1,1-トリクロロエタン及び四塩化炭素と共用)から大気試料を室内に常時導入して、ここから3mLの定量管に大気試料を分取し、これを分析計へ導入しています。大気中の一酸化二窒素をカラム(Porapak Q 80-100mesh 300cm + Porapak Q 80-100mesh 100cm)に導入し分離する方式を用いています。1時間ごとに分析を実施してその波形出力を解析し、一酸化二窒素の濃度に対応する出力値を求めています。
大気試料の一酸化二窒素濃度を測定する合間に、8時間に1回の割合で、濃度の異なる4本の観測用標準ガスの濃度を1本あたり15分間(計1時間)で測定するサイクルを繰り返します。


濃度の決定方法

これらの分析計の出力値をもとに、綾里での濃度を算出します。空気ベースで作成された4本の観測用標準ガスは気象庁本庁にある一酸化二窒素濃度較正装置によりあらかじめ濃度が正確に決められています( 「一酸化二窒素観測に関する較正」 参照)。これらの既知濃度とそれに対応した出力値から求めた2次式の検量線を観測サイクルごとに決定し、この検量線を用いて大気試料の出力値を濃度に換算します。分析計の応答が時間変化することによる誤差を最小にするため、1つの大気試料出力値について観測時刻前後の各検量線から求めた2つの濃度値を時間内挿して、1時間ごとの濃度値を得ています。
また、大気濃度に合わせた指標ガスを定期的に測定し、標準ガスの長期的な濃度変動や観測装置の異常などを監視しています。
さらに、観測用標準ガスの時間経過とともにみられるボンベ内でのガス濃度の変化(以下、これを濃度ドリフトと表します)をその使用前後に気象庁本庁で実施する較正によって確認し、濃度ドリフトが検出された場合にはドリフト量に応じて補正を行い、最終的な濃度値を決定します。
このようにして求めた一酸化二窒素の大気濃度値は、気象庁の一酸化二窒素標準ガスが世界気象機関(WMO)標準にトレーサブルであるため、WMO標準にトレーサブルな各国の観測地点の濃度値と直接比較することができます。


バックグランドデータの選別及び統計値の算出

一酸化二窒素において、大気クロロフルオロカーボン類と同様のバックグランドデータの選別及び統計値の算出を実施しています。手順は以下のとおりです。

  1. 測器の点検、故障時などを除いた、全ての1時間ごとの観測値から日別値を求める。
  2. 日別値について、算出に用いる時別観測値が3個未満の場合は棄却する。
  3. 日別値について、算出時の標準偏差がある値(Aとする)を超えた場合は棄却する。
  4. 上記の手順により残った日別値を、バックグランドデータとする。
  5. 月別値は、バックグランドデータとして選別された日別値の平均値である。
  6. 年平均濃度は月別値の年平均値である。

一酸化二窒素の場合、値Aは10ppbとしています。この値は、過去の観測値を検証して局地的な影響を受けているとみられる濃度データを取り除きながら、バックグランドデータを数多く残すことができるように決められています。


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