一酸化二窒素観測に関する較正
気象庁では一酸化二窒素濃度較正装置(図1)を整備して、2段階に分けた一酸化二窒素標準ガスの管理を行っています(図2)。
標準ガス
一次標準ガス
気象庁の一酸化二窒素濃度観測の基準となる1段目の一次標準ガスとして、約280~340ppbの濃度範囲にある5本のボンベを使用しています。この一次標準ガスは、時間経過とともにみられるボンベ内でのガス濃度の変化(以下、これを濃度ドリフトと表します)の少ないアルミニウム製の48リットルボンベに一酸化二窒素を空気ベースで充填したものであり、米国海洋大気庁地球システム調査研究所(NOAA/ESRL)が維持する世界気象機関(WMO)の標準ガス(Hall et al.
, 2007)を用いて、2006年12月に正確な濃度が決定されています。この濃度基準はNOAA2006Aスケールと呼ばれ、これにより国際的にトレーサビリティが確保されています。
観測用標準ガス
観測所で使用される2段目の観測用標準ガスは4本のアルミニウム製9.4リットルボンベで構成されており、一酸化二窒素濃度較正装置により一次標準ガスを使って濃度が決定されたのち、大気環境観測所(綾里)へ送られます。濃度ドリフト確認のため、綾里での使用が終了したのちに気象庁へ戻されて、再度一次標準ガスで濃度の確認が行われます(
「大気一酸化二窒素の観測」
参照)。
較正装置
一酸化二窒素濃度較正装置には、検出器に放射線源を用いた電子捕獲型検出器(ECD)を使用したガスクロマトグラフ方式の分析計(㈱島津製作所製GC-2014)を用いています。一酸化二窒素濃度較正装置の再現性は、標準ガスを10回導入し、そのピーク面積平均の標準偏差で3ppb以下となっています。
|
関連情報
- 一酸化二窒素の診断情報とデータ集
- 大気一酸化二窒素の観測
- 温室効果ガス等の観測に関わる較正
- 他の温室効果ガス等の較正( 二酸化炭素 メタン 一酸化炭素 地上オゾン )
参考文献
Hall, B. D., G. S. Dutton, and J. W. Elkins, 2007: The NOAA nitrous oxide standard scale for atmospheric observations, J. Geophys. Res., 112, D09305, doi:10.1029/2006JD007954.