観測された温室効果ガス等の濃度値には、数時間の間でも大きな変動がみられることがあります。これは、気象状況によって生じる、人間活動や植物活動などの影響がもたらす地表付近(接地境界層内)の局地的な濃度変動と考えられます。境界層内の広い水平空間を代表する平均的な濃度と考えることのできる大気のバックグランドデータを求めるためには、局地的な濃度変動を取り除いたデータを選び出す必要があります。
局地的な影響を受けた空気塊は、その空間規模が小さいため観測値の時間的変動が大きいと考えられます。信頼性の高いバックグランドデータを求めるためには、局地的な影響を受けていないデータを選別する一方で、できるだけ多くのデータを選び出すことも望まれます。
これらのことから気象庁では、温室効果ガス等の各観測結果について、バックグランドデータの選別を実施して、統計値を算出しています。
二酸化炭素の観測結果を例として、2009年のバックグランドデータの取得状況を図1~3に示します。
綾里、南鳥島及び与那国島における全ての時別値を対象にバックグランドとして採用されたデータを赤で、それ以外を青で表示しています。1年間で得られた時別値のうちバックグランドとして選別されたデータの割合は綾里で40%、南鳥島で77%、与那国島では68%でした。綾里では夏季に選別率が低下していますが、これは観測地点周辺の植物活動が活発になるためと考えられます。
図1 綾里における大気中の二酸化炭素濃度時別値の時系列図(2009年)
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図2 南鳥島における大気中の二酸化炭素濃度時別値の時系列図(2009年)
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図3 与那国島における大気中の二酸化炭素濃度時別値の時系列図(2009年)
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バックグランドデータの選別及び統計値の算出方法は、温室効果ガス等の要素毎に条件が異なります。詳しくは各観測項目のページをご参照ください