メタン観測に関する較正
気象庁ではメタン濃度較正装置(図1)を整備して、2段階(※注1)に分けたメタン標準ガスの管理を行っています(図2)。
標準ガス
一次標準ガス
気象庁のメタン濃度観測の基準となる1段目の一次標準ガスは5本のボンベで構成されており、濃度範囲は約1600~2150 ppbです。これらの一次標準ガスは、時間経過とともにみられるボンベ内でのガス濃度の変化(以下、これを濃度ドリフトと表します)の少ないアルミニウム製の48リットルボンベに空気ベースでメタンガスを充填したものであり、米国海洋大気庁地球システム調査研究所(NOAA/ESRL)が維持する世界気象機関(WMO)の標準ガス(Dlugokencky et al.
, 2005)を用いて、2006年10月に正確に濃度が決定されたものです。この濃度基準はNOAA04スケールと呼ばれ、これにより国際的にトレーサビリティが確保されています。
観測用標準ガス
各観測所や観測船で使用される2段目の観測用標準ガスは4本(※注2)のボンベで構成されており、メタン濃度較正装置により一次標準ガスを用いて濃度が決定されたのち、各観測地点へ送られて観測に使用されています。濃度ドリフトを確認するため、各観測地点での使用が終了したのちに気象庁へ戻されて、再度一次標準ガスで濃度の確認が行われます(
「大気メタンの観測」
参照)。
較正装置
メタン濃度較正装置には、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を使用したガスクロマトグラフ(GC)方式の分析計(㈱島津製作所製GC-14BPF)を用いています。装置の詳細については、気象庁が運営する世界気象機関 全球大気監視較正センターホームページ 及びMatsueda et al. (2004)に示されています。メタン濃度較正装置の再現性は、標準ガスを6回導入し、そのピーク面積平均の標準偏差を平均面積で割った値(変動係数)が0.07以下でとなっています。
気象庁では2010年まで二酸化炭素と同様、メタンでも2段目の標準ガスとして二次標準ガス(5本)を使用していました。
※注2)
気象庁の地上観測地点では、2011年までに非分散型赤外線分析計(NDIR)方式からGC方式に移行しました。これに伴いNDIR方式の観測装置に使用していた観測用標準ガス2本の組み合わせを、GC方式の観測装置に使用する同4本の組み合わせに変更しています。
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関連情報
- メタンの診断情報とデータ集
- 大気メタンの観測
- 温室効果ガス等の観測に関わる較正
- 他の温室効果ガス等の較正方法( 二酸化炭素 一酸化二窒素 一酸化炭素 地上オゾン )
参考文献
Dlugokencky, E. J., R. C. Myers, P. M. Lang, K. A. Masarie, A. M. Crotwell, K. W. Thoning, B. D. Hall, J. W. Elkins, and L. P. Steele, 2005: Conversion of NOAA atmospheric dry air CH4 mole fractions to a gravimetrically prepared standard scale, J. Geophys. Res., 110, D18306, doi:10.1029/2005JD006035.
Matsueda, H., Y. Sawa, A. Wada, H. Y. Inoue, K. Suda, Y. Hirano, 2004: Methane stadard gases for atmospheric measurements at the MRI and JMA and intercomparison experiments, Papers in Meteorology and Geophysics, 54, 3/4, 91-113.