オゾンホールの状況(2015年)
診断
(注意)2015年のオゾンホールの実況を9月~翌年1月まで毎月更新して報告しています。掲載したデータは速報値ですので、今後値が見直される場合があります。
オゾンホール
オゾンホールは、南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、オゾン層に穴の空いたような状態であることからその名が付けられました。南半球の冬季から春季にあたる8~9月ごろ発生、急速に発達し、11~12月ごろに消滅するという季節変化をしています。1980年代初めからこのような現象が観測されています。
2015年の南極域上空のオゾン層・オゾンホール
衛星観測によると、2015年の南極域上空のオゾンホールは、9月上旬まで過去10年(2005~2014年)の同時期の平均よりも概ね小さい規模で推移しました。
その後、例年ならば縮小し始める9月中旬以降も拡大し続け、10月9日に今年の最大面積である2,780万 km2まで広がりました(図1、図2)。
衛星観測を開始した1979年以降で見ると、今年の最大面積は1998年と同じ第4位の大きさでした(「オゾンホールの経年変化」、「南極オゾンホールの年最大面積の経年変化」参照)。
オゾンホールが南極大陸の約2倍の面積まで拡大したのは9年ぶりのことです。
また、この面積は10月に観測されたオゾンホールとしてはこれまでで最大でした(図3)。
10月中旬以降、オゾンホールは過去10年間(2005~2014年)の最大面積と同じか、大きい状態を維持しながら縮小し、12月21日に消滅しました(図1)。
今年のオゾンホールが発達した要因としては、南極上空の下部成層圏(高度約20 km)において、オゾン層破壊を促進する-78℃以下の低温域が、例年より継続して広がっていたことが考えられます(図4)。
南極昭和基地(図2の▲印)のオゾンゾンデ観測によると、9月に入って昭和基地上空ではオゾン層の顕著な破壊がみられるようになりました。
9~11月の月平均オゾン分圧の高度分布(図5)では、オゾンホールが明瞭に現れる以前の1968~1980年平均(図中の細破線)のオゾン分圧と比べると、高度約13~19km付近において顕著に低くなっていることがわかります。
図1 オゾンホールの面積の推移 オゾンホールの規模を示す要素の一つであるオゾンホールの面積(オゾン全量が220m atm-cm以下の領域の面積)の推移。赤線は2015年、 灰色線は2014年、黒線は過去10年間(2005~2014年)の平均値です。濃い紫色の領域の上端と下端は2005~2014年の最大値・最小値を表しています。 また、緑色の破線は南極大陸の面積です。米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(OMIデータ)をもとに作成。 |
図2 2015年10月9日のオゾン全量南半球分布図 中央の灰色の部分がオゾンホール。図の放射状に細長く広がっている白い領域は、衛星データが欠測となった領域です。 図中の▲印は、昭和基地の位置(南緯69度、東経39度付近)を示しています。 米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(OMIデータ)をもとに作成。 |
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図3 オゾンホールの規模が大きかった年のオゾンホール面積の推移 1979年以降においてオゾンホールの年最大面積が大きかった上位5つの年(1998、2000、2003、2006及び2015年)のオゾンホール面積の推移。橙色の枠内は10月のオゾンホール面積の推移です。米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データ(TOMS及びOMIデータ)をもとに作成。 |
図4 南緯60度以南の50hPa(高度約20 km)面における-78℃以下の領域の面積の推移 赤線は2015年、灰色線は2014年、黒線は過去36年間(1979~2014年)の平均値です。濃い紫色の領域の上端と下端は1979~2014年の最大値・最小値を表しています。 気象庁55年長期再解析(JRA-55)によって得られた気候データセットをもとに作成。 |
図5 2015年8~12月の月平均オゾン分圧の高度分布グラフ(南極昭和基地) 赤線:実線は観測値の月平均値 |