海洋貯熱量の長期変化傾向(全球)
令和6年2月20日 気象庁発表
(次回発表予定 令和7年2月20日)
診断(2023年)
- 全球の海面から深さ2000mにおける海洋貯熱量(海洋が蓄積した熱エネルギー)は、長期的に増加しています。
- 1990年代半ば以降の海洋貯熱量の増加速度は、それ以前と比べて大きくなっています。
海洋貯熱量の1955年からの増加量
水色の陰影は海面から深さ700mまで、紺色の陰影は深さ700mから2000mまでの貯熱量を示し、一点鎖線は海面から深さ2000mまでの解析値の95%信頼区間を示しています。
掲載しているデータは、解析に使用する観測データの追加などにより過去にさかのぼって修正する場合があります。
解説
IPCC第6次評価報告書(2021)において地球温暖化により地球システムに蓄積した熱エネルギーの約90%が海洋に取り込まれていると指摘されるなど、海洋の貯熱量は、地球温暖化の進行を監視する上で重要な指標です。図は海面から深さ2000mまでの貯熱量の1955年からの増加量を示します。海洋貯熱量は1955年以降長期的に増加する傾向にあり、2023年の貯熱量は1955年から約47 × 1022 J 増加しました。この間、海面から深さ2000mまでの平均水温は約0.16℃上昇しました。
海洋貯熱量の増加速度は、1990年代半ばからはそれ以前と比べて大きくなっており、1993年の前後で比べると、1993年以前は10年あたり約3.9 × 1022 J だったのが1993年以降は10年あたり約10.1 × 1022 J となり、増加速度がおよそ2.6倍となっています。海洋貯熱量の増加速度の上昇については、IPCC第6次評価報告書(2021)でも、1993年以降、特に2010年以降に増加していると報告しています。
また、海洋表層(ここでは海面から深さ700m)と中層(ここでは深さ700mから2000m。海洋の平均深さは約4000m)で比較すると、それぞれの貯熱量の増加量は、約30 × 1022 J、約16 × 1022 J となっています。このことから、地球温暖化の影響が海洋表層のみならずさらに深い層まで及んでいることがわかります。
海洋の貯熱量の増加は海水温の上昇を意味し(各海域の水温・貯熱量の長期変化傾向)、結果、海水が熱膨張して海面水位が上昇することのほか、海洋生物が生息する環境の変化による生態系への影響などが懸念されます。
参考文献
- IPCC, 2021: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change[Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S.L. Connors, C. Péan, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M.I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T.K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekçi, R. Yu, and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 2391 pp. doi:10.1017/9781009157896.