気象庁 | 気候リスク管理技術に関する調査(アパレル分野)


A社 秋冬用肌着トップ

1.販売数と気温の関係を調べる

用いたデータ

  • 気象データ:東京(大手町)の日平均気温
  • 販売データ:首都圏店舗における肌着トップの日別販売数
    • 曜日による変化の影響を除いて、気温と販売数の関係を見やすくするため、気温データ、販売データとも対象日(横軸)を中心に7日移動平均して用いた。
    • 同系列の色が各々の年に対応している。

結果

  • 秋冬用肌着トップは防寒用下着として利用されているものである。夏場は朝晩でも気温があまり下がらないため、需要は少なく、販売数も年間の中では低い水準。秋以降気温の低下によって朝晩の冷え込みも徐々に強まるため、販売数が増加していく。
  • 分析に利用した3年のデータともに販売数が大きく伸びるタイミングが2回ある。1回目は10月上旬から中旬であり平均気温がおおむね20℃(最低気温換算で17℃)を下回る頃である。2回目は11月上旬から中旬であり、平均気温が15℃(最低気温換算で12℃)を下回る頃である。
  • 販売数が大きく伸びるタイミングが2回あるが、肌着トップのカテゴリーの中でも生地の厚さの違いなど、異なるアイテムが売れている可能性がある。例えば、1回目の販売数急増に対応するアイテムは、比較的生地が薄い秋向けアイテム、2回目の販売数急増に対応するアイテムは、生地の厚い真冬向けアイテムといったことが考えられる。


【協力社からのコメント】
新製品の投入タイミングは何回かあるので、今回の分析結果を踏まえて、気温との対応という考え方を積極的に活用していきたい。

2.2週間先の予測に基づく対応策(2013年の天候推移を事例として)

秋冬用肌着トップの販売数と気温の関係が明瞭であったことから、その関係を利用し、気象庁が発表する異常天候早期警戒情報の2週間先までの気温予測を活用した対応策を、2013年の実際の予測を例に示す。


秋冬用肌着トップの販売数が大きく伸びる最初の目安温度は平均気温が20℃(以下)。2週間先の予測ではその確率を参考にする。 なお、通常秋口に平均気温が20℃を下回るのは10月中旬頃。9月下旬から2週間先の予測を積極的に活用する。

発表日 確率時系列 確率密度分布
9月27日(金)
10月1日(火)
10月4日(金)


発表日 内容 対応策案
平成25年9月27日(金)
(予測対象期間:10月2日~10月11日)
引き続き高温が予想されるが、かなり高くなる確率は前週までに比べれば下がる。10月5からの1週間で20℃を下回る確率は15%。 前週までは売り場の拡大(売り場変更)を行わない方針だったが、今後売り場変更を指示。秋冬用肌着トップの在庫を置く商品列数を増やす。
平成25年10月1日(火)
(予測対象期間:10月6日~10月15日)
平年を3℃以上上回るようなかなりの高温予報。期間の終わり頃にようやく20℃を下回る確率が13%。 店頭販促の強化。売場前面のVP(*)をブラジャーから秋冬用肌着に変更して積極的に商品の露出。
平成25年10月4日(金)
(予測対象期間:10月9日~10月18日)
引き続きかなりの高温が続く予想だが、その確率は次第に下がる。それとともに20℃を下回る確率も48%と上昇する。 肌着トップ訴求用の個別POPの掲示を始める。肌着が必要な気温になる予報が出ていることを、お客様に分かりやすく訴求。

* VP:ビジュアルプレゼンテーション。売り場での見せ方・表現方法の意味。


秋冬用肌着トップの販売数が大きく伸びる2段階目の目安温度は平均気温が15℃(以下)。2週間先の予測ではその確率を参考にする。 なお、通常秋口に平均気温が15℃を下回るのは11月上旬頃。10月下旬から2週間先の予測を積極的に活用する。

発表日 確率時系列 確率密度分布
10月25日(金)
10月29日(火)
11月1日(金)

発表日 内容 対応策案
平成25年10月25日(金)
(予測対象期間:10月30日~11月8日)
平年より高い可能性が大きく、15℃を下回る確率は11月2日からの1週間で18%。 第二段のシーズン新モデルの店頭での販促を強化するタイミングを11月初旬から、と決定。
平成25年10月29日(火)
(予測対象期間:11月3日~11月12日)
まだ平年並か平年より高い可能性が大きいが、15℃を下回る確率は11月6日からの1週間で65%と上昇。 15℃を下回る確率が65%に達する11月6日頃から、肌着トップの売り場をより前面に持ってくる措置を取る。
平成25年11月1日(金)
(予測対象期間:11月6日~11月15日)
平年並か平年より高い可能性が大きいが15℃を下回る確率は11月9日からの1週間で73%。 店頭の接客で積極的なアピール実施。より暖かい肌着が必要な気温の予報が出ていることを、お客様に分かりやすく訴求。

天候検証

東日本では9月から10月中頃にかけて気温の高い状態が続き、特に10月前半は顕著な高温となった。 このため、東京で平均気温が20℃を下回るタイミングは10月中旬の半ばと平年より遅くなった。
その後は顕著な高温は収まり、11月中旬には気温がかなり低くなった。 東京で平均気温が15℃を下回るタイミングは11月上旬後半でほぼ平年並であった。

東京の2013年秋の気温推移(7日移動平均)

【協力社からのコメント】
分析の結果、販売数が大きく伸びる基準温度に対して、予報を活用した対応策を実施する場合、予報のズレによる販売ロスを最小限に抑えることが重要と考える。 例えば、いくつかの対応策を用意した上で、その温度に達する確率の値によって、どの対応策をとるかガイドラインを設定しておくなどの手法が考えられる。
また、各店舗で毎回異常天候早期警戒情報をチェックできれば、本部からエリアあるいは店舗別に指示を出さなくても、予測情報を参考にした店舗での機動的な対応が可能なので、そのためにはサイトのさらなる利便性向上が望まれる。

他の事例をみる

販売数と気象要素との関係を調べた事例一覧

  アイテム別の販売数と気温との関係

  秋冬用肌着トップ    ロングブーツ    サンダル    ニット帽子    ブルゾン   ニット    コート(  F社  D社  地域別

  アイテム別の販売構成比の気温との関係

  レディースウェア    インナーアイテム   

  素材別の販売構成比と気温との関係

  コート    帽子

  気温以外との関係

  日傘   雨用靴


(参考)調査報告書

このページのトップへ