気象庁 | 気候リスク管理技術に関する調査(アパレル分野)


F社 レディースコート

1. 販売数と気温の関係を調べる

レディースコートの販売数と気温との関係をみる。

用いたデータ

  • 気象データ:東京(大手町)の日平均気温
  • 販売データ:首都圏店舗におけるレディースコートの日別販売数
    • 曜日による変化の影響を除いて、気温と販売数の関係を見やすくするため、気温データ、販売データとも対象日(横軸)を中心に7日移動平均して用いた。

結果

  • 例年10月中旬頃に販売枚数が伸び始める。
  • 平均気温がおおむね19℃(最低気温16℃)を下回る頃から販売数の伸びが大きくなる。
  • 2013年は19℃での対応というより、10月上旬の厳しい残暑から一気に気温が下がった影響が大きかったとみられる。


2. 2週間先の予測に基づく対応策(2012年の天候推移を事例として)

レディースコートの販売数と気温の関係が明瞭であったことから、その関係を利用し、気象庁が発表する1か月予報および異常天候早期警戒情報の2週間先の気温予測を活用した対応策を、2012年の実際の予報を例に示す。

①1か月予報に基づく対応策案

  • 用いた予報:平成24年9月14日に発表された1か月予報(予測対象期間は9月15日から10月14日)
  • 予報内容:気温が平年より高い確率は50%。平年より低い確率は10%。残暑傾向を強く示唆する内容である。
  • 対応策案
    • 物流倉庫に対して商品配送待機指示。店長会議・ブランド会議等にて残暑注意の通達。在庫だぶつきへの対策会議開催。
    • VMD(陳列指示、商品展開の一部)の変更の指示(出来る限りの清涼感がアピールできるよう陳列指示や商品展開の一部変更を行う)。

②2週間先の予測に基づく対応策案

レディースコートの販売数が大きく伸びる目安温度は平均気温が19℃(以下)。2週間先の予測ではその確率を参考にする。 なお、通常秋口に平均気温が19℃を下回るのは10月中旬頃。9月下旬頃から2週間先の予測を積極に活用する。

発表日 確率時系列 確率密度分布
9月28日(金)
10月2日(火)
10月5日(金)
10月9日(火)

発表日 内容 対応策案
平成24年9月28日(金)
(予測対象期間:10月3日~10月12日)
目先はかなり高温で残暑が続くが10月3日頃から高温は少し落ち着く予測が読み取れる。19℃を下回る確率は10月6日からの1週間で8%。 幹部会議・ブランド会議内で例年に比べて顕著な高温が続くことの共有。コートの販売戦略についての練り直し実施。
平成24年10月2日(火)
(予測対象期間:10月7日~10月16日)
一気に気温傾向は平年並の予想に。19℃を下回る確率は10月10日からの1週間で48%。 期間の終わりには19℃を下回る確率が高まる。直前の高温傾向からの落差もあり、体感的には気温以上の寒さとなる読みから、コートの積極展開開始。店頭でのディスプレイを前面に移動。物流倉庫に対して火急の出荷指示。
平成24年10月5日(金)
(予測対象期間:10月10日~10月19日)
再び少し高温傾向に振れる可能性があるが、19℃を下回る確率は10月13日からの1週間で56%。 状況に大きな変化なし。引き続きコートの積極展開を店舗に対して指示。
平成24年10月9日(火)
(予測対象期間:10月14日~10月23日)
平年並からまた高温傾向になりつつある。19℃を下回る確率は10月17日からの1週間で67%まで上昇。 必要に応じて、店頭判断で緊急セール実施の検討と、バーコード/レジ対応など。POPでの店頭販促強化。

天候検証

本調査対象期間の2012年秋は、9月は太平洋高気圧の勢力が強く、東日本では気温がかなり高く、残暑が厳しかった。 10月上旬にかけても気温は高かったが、10月中旬以降徐々に高温傾向は解消し、11月中旬から気温が平年を下回る状態が続いた。

東京の2012年秋の気温推移(7日移動平均)

【アパレル協力社からのコメント】
  • 2013年のシーズンの場合、東日本では9月から10月にかけて1か月予報ではほぼずっと高温となる予報が出されていたが、西日本は9月前半は東日本に比べて高温確率が小さく予想されていた。そこでシーズン当初は東日本店舗で展開すべき一部の在庫を西日本に移動させ、シーズン当初のニーズの高まりに応えることができた。一部、テナントの自由フォーマットが許されない店舗もあるが、予報の内容にあわせて店頭のPOPの内容を差し替える準備ができる。
  • ここ数年の夏から冬にかけての天候推移では、残暑傾向の場合が非常に多い。このことを踏まえた商品戦略(商品構成、販売期間など)をたてている。
  • 「過去と最近の日本の天候経過の特徴」(付録1)について、8月の最高気温の1℃の上昇は非常に興味深い。平均すると1℃ではあるが、晩夏の猛暑などアパレル分野に与えるインパクトは大きい。
  • また、昨今、気温変化に対応するスタイリング(着かた・着込む)の変化もあり、ストール・マフラー・スヌードに代表される巻物で調節する事も増加傾向にある。

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(参考)調査報告書

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